植物と向き合う料理〜「ボタニカル料理」

2025.06.18

長く、ハーブやスパイスを扱う料理を開発してくる中で、その香りや色、ほんの少しの使い方で変わる表情に、いつも心を動かされてきました。

けれど次第に、“使う”だけではなく、植物と向き合い、耳をすますような料理ができないだろうかと思うようになりました。 それが「ボタニカル料理」という考えのはじまりです。

味わうというより、触れる

ミントやローズマリーのように主張のあるものもあれば、タイムやフェンネルのように静かな余韻を残すものもある。香り、苦味、彩り、、そのすべてに、その植物らしい生き方が宿っているように感じます。

春の苦味、夏の清涼感、秋の湿った香り。植物の移ろいとともに、私たちの感覚も静かに揺らぎます。
だからこそ、料理とは「植物に触れる」ような行為だと感じています。

「ボタニカル料理」という名前に込めたこと

植物の姿には、静けさと豊かさが同居しています。
グリーンを基調にしながらも、赤や黄、紫など色の幅は広く、重なりや余白を生かした盛りつけには、季節ごとの表情がにじみ出ます。美しさに寄り添うための、静かなスタイリングです。

プラントベースを食材としての関係を見つめ直し、大げさに言えばアートに近い感覚の料理の楽しみかも目指しています。
自然の美しさや深さを知り、自分の感覚に立ち返ること。
そんな時間を料理の中にそっと宿せたらと思っています。